一粒万倍 種まき大作戦
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棚田チャレンジ 2009 vol.5 09.05.23−24 草取り1

田植えから3日後、棚チャレメーリングリストには王国スタッフ・宮田さんから報告が入った。

「早速!イネゾウ出現です。あと二週間、ちまちまと畦際の虫はつぶしておきます」

去年に続きイネミズゾウムシ出現。かわいいイネゾウ、潰してしまうのはかわいそうだけど、背に腹は変えられない。今年もお相手させていただこう。

そんな具合に気合いを入れていた草取りだったのだが、その前日、宮田さんから再びメールが届いた。しかも、今度はこんな内容。

「田の水が枯れてしまいました。雨も降りません。テルテル坊主を逆さにつるしたら、雨が降るんでしょうか・・・?」

どうやら田植え後の天気続きで、棚田の水が枯れてしまったらしいのだ。「うそ! 田植えではあんなに降ったのに!」 と心の中で叫びつつ、こればっかりは天のご機嫌なので仕方がない。雨乞いの踊りでも習いに行くか。

そんな思いを抱きつつ迎えた当日。今回の集合場所は東京湾フェリーの房総の基地、金谷港。横須賀に住む私と横浜に住むカロちゃん(開墾から参加)は、東京経由で鴨川に行くよりも横須賀の久里浜港から出るフェリーで海を渡る方が随分早いのだ。ここで棚チャレ一期生・ジョーの運転する車に乗ったルミさんとタミコさんに加え、神澤さん一家とチハルさん(棚チャレ一期生)が乗る一粒号が合流。いつも立ち寄る魚屋で晩ご飯の魚を仕入れ、店のおじちゃんおばちゃんとおしゃべりするのがお決まりのコースに突入した。

「あんた達、自然王国に行くんだね。カフェがあるんだって? TVで見たよ。私たちは千枚田にも行ったことないけどねぇ」

地元にいるとなかなか行かないもんですよね、そんなことをいいながらよもやま話をしていると、奥からおじさんの声が飛んできた。

「イカおまけしとくよ」

なんと、店先のトロ箱に入っていた小振りなイカをとって、人数分を袋に入れてくれたのだ。お金を払うと言っても、いいからいいから、と受け取るつもりがない。なんだか胸が温かくなってくる。来月もまた来るからと声をかけて、一路、自然王国へと向かった。

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自然王国に到着すると、藤本敏夫記念館の中にカフェがオープンし、リラックスしたくつろぎのスペースが完成していた。宮田さん、田植えに参加してくれたワタナベさんと合流。棚田の様子を聞いてみると

「今日は草取りできないかもしれませんよ。田んぼに水がないので、中に入れないんです。今の時期、やりたかったんですけどねぇ」

とあきらめ顔。

「水がない状態で田んぼに入ると、土に足でつけた穴があいたまま乾いてしまうので、入るわけにいかないんですよ。なので今日は田んぼの土手草刈りをしましょう」

田んぼの土手の草は、草を生やしておくよりも、きれいに刈ってしまった方が土手が固くなって崩れにくくなるのだ。

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だけれどまだまだ雨のことが気になる私。宮田さんにこんなことを聞いてみた。

「この辺って雨乞いの踊りとかないんですか? 踊った方がいいんじゃない?」

半ば冗談、結構本気のクエスチョン。しばらくうーんとうなった後、彼はこう答えた。

「踊りはないけど、近くに雨を降らせる龍神さんならありますよ。行ってみましょうか」

おお、龍神さま! 霊験あらたかそうな響き! これを聞いたら行くしかない。

こうして道具を軽トラに載せた一同、バケツと竹筒を持って、八大龍王の塚、いさき池へ。ここは自然王国のある大田代という集落の奥まったところにある。荷台に人を満載した軽トラは、公道から森際のガタガタ道に入ってしばらくいったところで止まった。

「ここですよ。多分。ボクも行ったことないんです」

自然王国で働きだした縁から地元の女性と結婚した宮田さんは婿入りして鴨川の人になった新住民。村の行事などには欠かさず参加しているので、こういった昔からの情報も耳に入っていたのだ。そして私たちは、森の奥へと続く川沿いの道を通って、龍神様のお膝元へと進んだ。

すると、奥には少し開けた場所があって、しめ飾りのかかった石碑と小さな池があった。

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「ここの水を汲んでいって田んぼに流すと雨が降ると言われてるんですよ。それで、田んぼに水がいっぱいになったら、田んぼの水を汲んで池に返すんだそうです」

天水頼みの棚田ならではの習わし。お礼に水を返すというところがなんとも風情がある。

「どうか雨が降りますように。できれば今日の夜から明日の朝まで。そしてたら明日は田んぼに入れるから」

なんて都合のいいお願いをして、棚田へ向かった。

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棚田に到着すると、やっぱり水は消えていた。

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水がなくなったところにはところどころひび割れがはしり、わずかに水が残ったところにはオタマジャクシ達が集まっていた。しかし彼らも苦しそう。これはなかなか厳しい。早速ジョーが水入れの儀式。3枚の棚田に少しずつ龍神様の水を流し入れた。そしてみんな、雨を願って祈りを捧げた。

その後、試しに宮田さんが田んぼに入ってみたのだが、歩いた後に膝までハマった足形がしっかりと残っている。こんな大きな穴が乾いて固まってしまってはどうしようもない。どう見ても作業が難しそうだ。結局みんなで鎌を持ち、土手の草刈りを開始した。

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日頃は刈り払い機で一気に草を刈ってしまうことが多いのだけど、

「こういうローテクの道具っていいと思うんですよ。機械に頼っていると対した技は入らないけど、鎌の場合は上手い下手がよくわかるんですよ。こんな農作業体験、なかなかできませんよ(笑)」

と宮田さん。ちょっと自嘲気味なその話に、近くにいるチャレンジャー達からも笑いがこぼれる。農作業は自然との対話。思い通りにいくことばかりではないのだ。

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実はイネは今が一番水を必要とする時期。水が少なくなると生命力旺盛な雑草に負けてしまうのだ。このまま置いて帰ってどうなってしまうか心配である。だけど今は彼らの生命力を信じて託すしかない。

そして田んぼを後にして、畑へと向かうと、周辺の緑が一気に芽吹き、初夏の訪れを告げていた。冬の間はたいした変化もなかったので、その変貌ぶりに驚かされる 。生命の躍動の季節がやってきたのだと改めて実感した。農家が草刈りに苦労するというのにも納得だ。

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種まきから約20日経った畑には、高キビ、餅キビ、粟、稗の雑穀4種と陸稲が顔をのぞかせていた。芽が出たばかりのもの、4センチくらいに伸びたもの、大きさはいろいろだけど、こうして少しずつ大きくなっていくんだなあと実感が湧いてくる。やっぱり自分たちがまいた種が芽吹いた姿はかわいい。

ここでも主な仕事は草刈りと草取り。みんなで畦の草を刈り、畝の草を引き抜いて畑のメンテナンスをしていった。刈った草は前回と同じくマルチにしていくのだが、前回敷いた草はすっかり乾いて茶色くなっていた。こうして乾燥から土を守ってくれているわけだ。草のいのちに感謝。

生まれたばかりの小さな芽は、雑草にも負けやすいし、周囲の草を抜くときに根が動かされて切れてしまうこともある。なので、抜くときは芽の周りを指で押さえながら、そおっと抜いていく。場合によっては雑草の根は残したままで、葉っぱだけを切ってしまってもいい。こうして全面草取りが完了。刈った草で軽くマルチングして、畑経由で夕食の準備に入った。

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前回の棚チャレのとき、王国では土でつくる調理窯アースオーブンをつくっていたのだけど、すでにそれは見事に完成! 横にはおくどさんもついている。今回は鰹を藁で焼いてたたきにもする予定。どうせ火をおこすならと、おくどさんも活用させていただくことになった。

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このおくどさん、超省エネ設計だそうで炊き口が15×15と小さく、周りを固めた粘土の蓄熱でお釜全体を温めて炊き上げていく。ライターがない、焚き付けはどうしよう? なんてあたふたを準備をしているところに、鴨川在住の種まき大作戦世話人・田中正治さんがやってきた。そして私たちのあまりのおたおたぶりに、見ちゃいられないと助っ人を買って出てくれた。

助かったーとばかりに他の作業に移る一同。穫れたての空豆、人参、レタス、タマネギ……。甘味たっぷりの野菜達に舌鼓を打ちながら、ワイワイがやがや楽しい宴。人数が多くても少なくても楽しいめるのが棚チャレの魅力だ。自然に囲まれた中で農作業して一泊過ごし、みんなでご飯を作る。そんな時間がとても貴重になってきていた。

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そして翌日。神澤さん一家がマクロビオティック料理研究家・中島デコさんのお嬢さんの結婚式に参加するため、早朝に王国を発った。デコさんとご主人のエバレット・ブラウンさんがつくった半農半X的暮らしと情報発信の空間。今日の結婚式には500人が参加するのだとか。にぎやかになりそう。

残ったチャレンジャー達はその後、ピーマン定植とえごま種まき。まずは乾燥して固くなった土を砕いて、空気が通りやすくする。ピーマンは30センチ程の間隔をあけて植えていく。穴を開けて苗を追置き、上から土をかぶせ、添え木に軽く結びつけたら完成。7月〜9月頃まで収穫できる。

エゴマは 葉っぱを焼き肉に巻いて食べるとおいしい!と宮田さんおすすめ。陸稲と同じように、土を筋状にかいたところに種を撒き、発芽しやすくするために籾殻をかぶせる。空いているところに草マルチを強いて完成だ。これで残すは小豆のみ!  作物の種類も増えて、ますます畑に通うのが楽しみになってきた 。

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龍神様への都合のよいお祈りはさすがに届かなかったらしく、曇り空のまま作業は終了。今日は無理でも、明日からは 雨が降りますように! 元気に育ってくれますように! そんな思いを抱きながら鴨川を後にした。

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photo & text by kco_sawada 澤田佳子

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