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棚田チャレンジ2009 vol.2 開墾2ー溝掘り&クロ切り(2月28日〜3月1日)その2

空からの贈り物

畑の夢を語り合った夜の宴も終わり、二日目の朝がやってきた。

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誰もが晴れると信じて疑わなかったその日、予想と期待に反した結果が訪れた。夜中から降り始めた雨は朝食の頃になるとさらに勢いを増し、屋根にあたる雨音も高らかにあたりに鳴り響いている。こんな威勢のよい降りの中では水分をたっぷり含んだ土をひっくり返すのは至難の業。今日は作業中止?! ついに棚チャレ神話崩壊か!?

その様子を見て、主催者・ハッタさんは頭を振りながらうんうんうなっていた。参加者に聞いてみると雨具を準備していない人が半数程いる。去年は草取りの時期に一度だけ雨が降った。でもそれは夏のこと。まだ春の声も遠いこの時期にカッパも着ないで作業となると、間違いなく風邪をひくだろう。楽しい農体験がブルーな風邪っぴきになるんじゃ意味がない。

「じゃあこうしましょう。カッパを持っていない人は、王国スタッフの林さんのお宅にお邪魔して農村の暮らしについて話を聞く、カッパのある人達は田んぼに行ってクロ切りをする。そして早めに終わって温泉に行きましょう!!!」

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こうして雨の農作業が始まった。クロというのは、畦に田んぼの内側から塗り付ける水止めの粘土層のこと。田んぼに水を入れて田植えの準備をする前に、昨年塗ったクロをはがして畦を元に戻しておくのだ。そして畦際にできた水の抜ける道などを探して、水漏れしないようにメンテナンスをしていく。畦切りなど地域によって呼び名は違うようだが、田んぼをするには欠かせない作業のひとつなのだ。

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ミツヲさんと宮田さん指導の元、畦にスコップを当てていく面々。 クロ切りのコツは、畦とクロの切れ目から垂直にスコップを入れること。 チャレンジャー達は心なしか昨日よりは随分と慣れたご様子。スコップの扱いも体の使い方もだいぶコツを掴んできたようだ。当たり前のようだけど、水の入っていない農閑期の田んぼの土は堅い。雨で水は溜まっていても、いつもの田んぼだと、とろとろとした柔らかな粘土の感触と、重力が弱まったようなふわふわした感覚があるのにそれがない。なんだか少し不思議な気分。

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10人もいれば1反の田んぼも作業がサクサク進んでいく。これは楽勝、この調子で終わらせて早く帰ろうと思っているところに、とんだ事件が勃発した。

「うわあ、ここ穴空いてる! 水が流れてますよ!」

なんと、二段目と三段目の棚田の間の土手に大きな穴が空いていて、3段目の田んぼから水が流れ出している。水は田んぼの命。これは大ピンチ!

「どこから流れてきてるのかわからないな」

そういいながら土手をスコップでチェックしていくミツヲさん。すると土がぼろぼろと崩れてますます穴が大きくなっていく。そういえば去年もこのあたりに小さな穴があって、周りがくぼんでいた。それがだんだん大きくなって、こんな大きな穴になっていたのだ。

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そうしているうち、宮田さんは1.5メートル程に伸びたセイタカワダチソウをとってきて穴に差し込んだ。

「これはかなり深そうですねえ」

空洞を崩していくと穴はかなりの面積になり、流れ出てくる水の量も勢いを増すばかり。土手は水の流れにそって少しずつ削られ始めている。

田んぼの下に空洞があるかもしれないと、穴の空いているところから奥をみんなで踏み歩いてみたり、畦際に土を入れて踏み込んでみたり、いろいろ試してみるのだけど、これといった原因が分からない。試行錯誤するうちにどんどん時間は過ぎていく。参加者達の口からも徐々に「寒い」が聞こえてくる。そりゃあ寒いはずだ。だって今日からやっと3月だもの。まだ梅の時期で桜も咲いていない。私は私で、そろそろ雨に濡れるカメラが気になってきた。

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「次回までに相談しておきます。土を運んできて埋めることになりそうだけど、今日はこれで終わりましょう」

まさに天の一声。土手が崩れないように塩化ビニールのパイプをさして水を逃がし、急いで記念写真を撮って本日の作業終了。雨のチャレンジャー達よ、ありがとう! 君たちは偉い!!

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王国に到着すると、田舎暮らし訪問舞台が既に帰ってきていた。

「林さんの家、おもしろかったよ―。長老の話を聞く会を開いたり、地域通貨の事務局をしてるんだって」
と、満足気。一方のクロ切りチームはどうかというと、寒さは変わらずとも意外にさっぱりとした雰囲気。「お腹空いた」とお昼のカレーに一直線なのであった。

そして食事の後はお待ちかねの温泉へ。いつも通っている棚田の農村から、海沿いへと車で移動した。鴨川市の中心街のある外房側には、サーファーの集う海、シャチもいる鴨川シーワールド、都内から通う人もいる亀田病院などがあり、棚田の広がる大山地域とは全く違う風景が広がっている。車で30分程走って「かんぽの宿 鴨川」に到着すると、やっぱり寒そうな顔をしている。しかし車で送ってきてくれたミツヲさん達は平然とした顔。家に風呂あるからロビーで待ってますよと、東京行きのバス停までの送迎に備えてくれることになった。ああ、なんてありがたい! そんな彼らに感謝の言葉を残して階上の浴室に向かうと、爽快な風景が待っていた。

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脱衣所も浴室もオーシャンビュー。緑の林、鴨川シーワールド、そしてその向こうに海が広がっている。実はこれが、一般的な観光客が目にする鴨川の姿。しかし私たちにとってはまさに、「あなたの知らない鴨川」との出会いだった。「あったまるね」「いいところだね」「 雨もなかなかいいもんだね」なんて女子はわいわい話しながら温泉を満喫。結果的には雨にも満足!の開墾溝掘りツアーになった模様。やれやれ一安心。

しかし帰宅後。滅多に風邪をひかないはずの私が、今回ばかりはなぜだかしっかり風邪っぴきに。鼻をグスグスいわせながらしばらく家でゴロゴロすることになってしまった。ぼーっとした頭に王国スタッフの平然とした顔が目に浮かぶ。

「ハァーーックッション」

ああ、お百姓さんってホント、強いんだなあ〜。なんて思いながら、再び布団に潜り込んだのだった。

・・・次回はいよいよ天地返し。果たして無事に晴れるのか……? 乞うご期待!

photo & text by kco_sawada 澤田佳子

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