棚田チャレンジ vol6 稲刈り9月23日
ついにきた! 収穫の日!
ビューーー。ザザザーーー。温暖化で季節感が狂っているとはいえ、秋はやっぱり台風の季節。この時期収穫を控えた農家は稲が倒れるんじゃないかと気が気じゃない時間を過ごす。天気の様子を見ながら、稲刈り、脱穀、樅摺りなどのタイミングを見極めるのだが、ウィークデイに仕事をしながら田んぼに出ていることも多い現代では、なかなかそうも言っていられない。かくいう棚田チャレンジも、天気よりも日程先行の稲刈りスケジュール。稲刈りは9月23日秋分の日に決定している。後は夏の雨と同じく運を天にまかせるだけ。しかし、稲刈り直前の週末からすっきりしない天気が続き、前日22日、鴨川では朝から一日雨模様。これはどうなることやら……。
ところが翌朝、前日までの雨雲は吹き飛び、鴨川には抜けるような青い空が広がっていた。どこからどこまでもツイてる棚田チャレンジ。最高の空の下で、待ちに待った収穫の時がやってきた。

昔の農村では田植えと稲刈りはお祭りも同然。唄を唄いながら村総出で苗を植え、家族そろって黄金の稲を刈り集める。自然とともに生きる喜びに溢れるハレの時だったに違いない。そんな古き良き日本の時間に思いを馳せながら、一足先に着いた私は、王国スタッフと一緒に鎌や田植え足袋など田んぼ稲刈りグッズを準備していた。今回は日帰りで、東京からバスで約40人の稲刈りチャレンジャーがやってくる。久々の大人数での農作業だ。
今年は梅雨の降雨も夏の日照も十分で、米の出来はどこでもかなりいいらしい。王国でも他の会員の田んぼでは豊作になっていたそうだ。しかしそちらはイネゾウ対策の農薬を一度だけ使っている田んぼ。イネゾウ好みの無農薬田んぼとは条件が違う。果たして無農薬、米ぬかだけのほぼ無肥料で育てた棚田はどうなんだろう?

到着した面々は今までの参加者と新参加のメンバーが混じっていて、どの顔もやる気満々。それもそのはず。参加者のほとんどが稲刈り初体験。黄金に色づいた棚田には、参加者達の興味と期待を込められた視線が注がれていた。これは盛り上がるしかないでしょう!
いよいよ稲刈り開始、その前に……
手で苗を植えたこの田んぼ、もちろん収穫も手刈り。作業の前に自然王国スタッフ宮田さんと自然王国代表理事・石田三示さんから、稲を縛る藁の綯い方のレクチャー。

藁を6本とり、半分から上を綯えるように膝に挟んで固定する。
- 左右の手に3本ずつ取って親指で挟んで持ち、右で持った藁が左手の手首のあたりにくるように構える。
- 親指を藁から外しながら、左右の手を摺り合わせる。
- 右手と左手の位置が逆転したところで、それぞれが持っていたのと反対の藁を持ち、右手を手前に、左手を奥にと移動させて、もう一度2)の状態を作る。
- これを7回繰り返し、最後に先端を結ぶ。
これで出来上がり。コツは固くすると結びにくくなるので、適度な余裕を持って柔らかく仕上げること。
こうしてできた藁紐を腰に蓄え、準備OK!

それから実行委員長yaeさん&自然王国・藤本博正さん夫妻の挨拶の後、石田さんの稲刈りの実演指導が始まった。
まず、滑りやすいので軍手はしない、それから稲は順手でつかむ(つかむ手の親指は上に向ける)。次にいよいよ鎌なのだが、ここがポイントで、うまく切るには要領が必要。刃を斜め上に引き上げるようにして稲を切ると、力もいらずにスパッと切れる。力を入れないで鎌をすっと引くのが上手な刈り方なのだ。これを真横に引こうとするとうまくいかない。ギコギコとのこぎりで切るような格好になってしまって、余分な力を使うことになる。

まずは10人がトライ。最初はぎこちなくザクザクと稲を刈っていたが、進むうちにだんだんうまくなっていった。そして束ね方にも石田さんから指導が入る。
- 片手でつかめるくらいの束を作り、刈り口を鎌の刃でたたいてそろえる。
- 地面に綯った藁紐をおいて、稲束を置く。この時、刈り口から10-15cmくらいのところが藁紐の上にくるようにする。
- 藁紐の上で稲束を直角になるように交差させ、4束を重ねる。
- 藁紐の両端を合わせてぐるぐる回し、稲束をぎゅっと締める。締まったら、藁紐を引っぱり、稲束との間に指一本はいるくらいの隙間を空ける。
- 稲束の刈り口の方から撚り合わせた稲紐を押し入れ、固定する。
こうしてできた稲の束を、竹などで作った「はざ木」にかけて天日干しすると、太陽の光を浴びて、さらにおいしいお米になっていくというワケ。

ここで一旦お昼。全員でのチャレンジはお弁当を食べてからになった。黄金に光る田んぼを前に、おにぎりをほおばる。その姿はなんだかとても微笑ましくもほっとさせられる。「日本にはこんな楽しみがあったんだなあ~~」と、改めて田んぼのよさを実感させられたひとときだった。

命育む妙なる棚田 これが「収穫の喜び」だ
棚田は3枚。それぞれに王国スタッフが付き、稲刈り開始が開始された。一番上の田んぼについたのは実行委員長yaeさん。周りの参加者にアドバイスしながらテキパキと作業を進めていく。参加者との違いは一目瞭然。なにしろ早い! さすがに「農家の妻」を自称する半農半歌手だけのことはある。
初めての稲刈り参加者達も次第に慣れ、作業はどんどん進んでいく。しゃがんだ姿で稲を刈り続けるのは、これで結構重労働。各自で時々休憩を入れながら作業は続く。中には放心したような表情の人も。
さらには日に焼けた真っ赤な顔で、顔中に汗をかきながら「やせました!」と叫ぶ人も。どうやら日頃の運動不足の解消にも一役かってくれたらしい。しかし、どんなに運動をしている人でも畑の作業は結構キビしかったりもする。農作業で使う筋肉は日常生活で使う筋肉とは微妙に違うのだ。
とはいいつつも、大半の人たちはおしゃべりしながら、笑いながら、楽しそうに稲刈りを進めていた。手に持つ稲穂の重さ、乾燥した稲藁の香り。食べ物ができていく喜びと、それを自分の手でやっているという充実感。収穫には他には替えられない大きな喜びがあることを、たくさんの笑顔が教えてくれていた。


田植えから参加してきた棚田メンバー達の顔も活き活きしている。それもそのはず。田植えから半年間、イネゾウや水の心配をしながら過ごしてきたメンバー達は、回を増すごとに稲への愛情が増してきていた。「なんとかして棚田に行きたい!」そんな思いがメーリングリストに投げかけられ、「稲刈りはいつ?」「日程を空けるから早く教えて!」などなど、収穫を心待ちにする声が寄せられていた。それにはもちろん分け前が増えるという物質的な欲望もあるだろう。しかし、東京で少し働けば、おいしいお米は簡単に手に入る。それぞれが街で本業を持っている彼らには、お米を買うのはなんてことはない。ではなぜ彼らは田んぼに立ちたいと思ったのだろう?

それは、自分で作ったものを食べるという幸せ「農の喜び」に他ならない。茶碗一杯のお米には、一年間の思いがぎっしり詰まっているのだ。その味は、どんな高級米にも勝る格別なおいしさなのである。
Yaeさんがよく口にする「土の上に生きる幸せ」。そして「お米がある安心感」は、ここにあるに違いない。稲束を持つ手の感触が、それを確かに伝えていた。

そしてすべての稲が刈り取られ、はざ掛けも終了。稲刈りが、終わった。



収穫の喜び 収穫の宴
収穫を終えた面々は鴨川自然王国に場所を移し、今年鴨川でとれた新米と地場産の魚、穫れたて野菜料理をアテに、オーガニックビールと自然酒で祝杯をあげた。外仕事の後のビールは格別! そんな喜びの声に混じりながら「うまい! でもこれで体重が戻った」なんて半分冗談で半分本気な嘆きの声も。しかしその顔は、えも言われぬ満足感で一杯になっていた。



そして気になる収穫量。「うーん。少ない」と思案顔の宮田さん。「王国の他の田んぼに比べて分蘗が少ない。2-3俵がいいところかもしれない」。農薬や化学肥料を使う慣行農業では、一反で5俵くらいは穫れる。それが無農薬、加えて天水まかせの棚田になると、4俵くらいかなという話だったのだが、実際に稲束を手で掴んでみて、思った以上に束が細かったというのだ。
しかし後日、脱穀、籾摺り、を終えた宮田さんからのメールでは、3.5俵、約200kgのお米になったと嬉しい報告。やった! がんばった! 収量が増えるだけで一段と感慨が深まる。さらに気になるのがお米の分配。こちらは参加者には一回につき500g、全回参加者には3kgが分け前として配られることになった。残りのお米は10月19日の土と平和の祭典のスタッフ&出演者用まかないと、アースデイ東京2009の飲食ブースの一部で使用される。
「農」をテーマにしたアースデイ東京2008と種まき大作戦の共同企画で始まった「棚田チャレンジ」。太陽と大地の恵みをいただき、豊作で無事に役目を果たし、これで一年の作業は終了。めでたしめでたし!

終わりにかえて~棚田チャレンジが残したもの
「来年はお米をもっとたくさん作りたい」「麦を植えたい」「大豆ももっと作りたい」「開墾だーー!」
案山子づくりを終えた後、メンバー達の間でそんな声があがってきた。
棚田チャレンジの一年を通じた米づくりで、何が生まれたのだろう?
自然と触れ合う時間。田舎の空気を吸う度に体が緩んでいく実感。農作業の楽しみ。そして生まれた収穫物、お米。
たくさんの自然の恵みをいただいた中で、一番大きく変わったのは参加者一ひとりひとりの「感性」ではないだろうか?
食べ物を作る喜びと、その豊かさを感じる「感性」。何度も足を運び、その場の空気を吸い、自分の手で触れることで、「今まで感じなかった何か」を感じる力が、ひとりひとりの心の中に生まれ、稲の成長とともに大きく育っていったように感じている。そしてそれを一緒に分かち合う仲間がいること。実はこれが、お米よりも大きな収穫物だったかもしれない。だからこそ生まれた「来年は……」という会話。喜びが喜びを生む豊かな連鎖が、既に始まろうとしている。
かくいう私も、田植えと稲刈りにはこの2~3年参加してきたけど、草取りも含めて一年間米づくりに携わったのは初めて。お陰でいろんな「今まで知らなかったこと」に出会い、田んぼにまつわるいろんな気持ちに触れられた。棚田チャレンジで余った苗を持ち帰って植えた我が家の庭先のミニ田んぼも無事に実りを迎え、昨日収穫を迎えたところ。お茶碗一杯分くらいだけど、自分が育てたお米には格別の喜びがある。お百姓さんはこんな楽しみを感じながら、みんなのためにお米を作ってくれてるんだなあなんて、ちょっとうらやましくなった。
参加者のみなさん、ありがとう。
また来年、棚田で会いましょう。
Let’s go to the rice fields !
私たちの田んぼに出掛けよう!
棚田チャレンジ、10月19日(日)の土と平和の祭典にもブース出展します。ラブリーな案山子と力作my茶碗、是非、私たちの作った稲穂に会いにいらしてください。脱穀体験も企画中です。
Text&Photo by kco_sawada 澤田佳子














